乾いているところ。

前と後ろはないみたい。後ろを向いてれば前のような気になるし。前は後ろかなとも思う。そもそも、見えてるものは全て過去の出来事なのだから。未来は気づかないうちに後ろからそっとやってきて、私の横を通りすぎた瞬間に過去になる。今は体にピタッとくっついて一瞬で剥がれてしまうもの。過去になった今はポロポロと落ちていく。足元に積もったその破片たちは、少しザラついて砂みたい。積もっていく。どんどん。

「もぉーいーいかーい」と聞こえた気がした。そっか。もういいのかと思う。しばらくぼーっとしていると、音が消えていることに気がついた。消えてるじゃないない。キーンという細くて高い音。そしてそれが止まった時に無音になる。ほんのすこしの間。実際はもっと音はなかったのかもしれない。でも音が無いと気付いた瞬間に音があることに気づくから短いのか、長いのか、本当の時間はわからない。

(空白の話2)